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発注量の計算は、Excelでどこまでできるか

Excelで出せるのは、条件をそろえた過去の平均と、その幅までです。移動平均は傾向をならす計算なので、曜日や季節の波は消えます。発注に使うなら、同じ曜日だけの平均を目安にし、移動平均は傾向の確認に回します。

この記事でわかること

  • 発注数の目安に使うのは、条件をそろえた平均です。同じ曜日、同じ営業形態の日だけを集めて、平均と最小・最大を出します。曜日を混ぜて平均すると、曜日による差が数字から消えます。
  • 移動平均は、その週を含む一定期間の平均を並べる計算です。総務省統計局の解説では、傾向をつかむための手法として説明され、季節変動を取り除く季節調整にも使われています。発注する数量そのものを出す計算とは役割が違います。
  • 季節をまたいで数量が動く品目は、前年の同じ時期と比べます。ただし前年に大きな変動があった時期と比べると、その影響をそのまま受けます。
  • 本文の試算例では、同じ曜日の直近8週が9・12・10・15・11・13・12・16個のとき、8週の平均は12.3個、直近4週の移動平均は13.0個、その前の4週は11.5個になります。
  • Excelで続けられるのは、品目が10〜20点で、集計が週1回程度までの範囲です。品目数と集計の頻度が上がると、計算よりも転記と確認に時間が取られます。

Excelで出せるのは平均と幅まで。3つの計算を役割で分ける

発注量をExcelで決めるときに使える計算は、大きく3つあります。同じ条件の日だけを集めた平均、前年の同じ時期との比較、そして移動平均です。この3つは、それぞれ答えられる問いが違います。

あすいくつ頼むかの目安になるのは、1つ目の平均です。同じ曜日、同じ営業形態の日だけを集め、平均と最小・最大を出します。2つ目の前年同期との比較は、季節によって数量が入れ替わる品目に使います。3つ目の移動平均は、売れ方が上向きか下向きかを確かめるために使います。

3つを1つの列にまとめようとすると、どれも中途半端になります。シートの列を分け、平均の列、前年との倍率の列、移動平均の列として並べておくと、どの数字を見て発注したかが後から追えます。

同じ条件の日の平均

あすの発注数の目安になります。同じ曜日だけを集め、平均と最小・最大を出します。

前年同期との比較

季節で数量が動く品目に使います。去年の同じ時期に対して何倍かを見ます。

移動平均

売れ方が上向きか下向きかの確認に使います。発注数そのものはここから出しません。

同じ曜日だけを集めて平均する。混ぜると曜日の差が数字から消える

手順は、日付と数量の2列から始まります。日付の隣に曜日の列を足し、同じ曜日の行だけを集めて、平均と最小・最大を出します。8週ぶんの記録があれば、同じ曜日が8回そろいます。

試算例として、ある品目の金曜の販売数が、8週前から順に9・12・10・15・11・13・12・16個だったとします。8週の平均は12.3個、最小は9個、最大は16個です。同じ品目を曜日で分けずに平均した1日8個と並べると、金曜だけで4個以上の開きがあります。この開きは、曜日を混ぜた平均からは読み取れません。

曜日をそろえるのは、暦そのものが数量を動かすからです。総務省統計局は季節的な動きを除去という解説で、季節変動の要因として、天候や気温などの自然条件、月による日数や休日の違いといった暦の要因、中元や歳暮のような制度・習慣からの影響を挙げています。曜日の差は、このうち暦の要因を1週間の単位で見たものにあたります。

平均を出す前に、記録から外す日を決めます。臨時に休んだ日、棚卸のために早く閉めた日、催しで普段と客層が違った日です。こうした日を極端な数字のまま平均に入れると、平均も最小・最大も動きます。外した日は消さずに、別の列へ理由を書いて残してください。同じ条件がまた来たときの材料になります。

移動平均は何をならすのか。翌週の数量はここから出ない

移動平均の定義は、統計局のその他のデータ分析手法という解説に書かれています。各月の移動平均値として、その月を含む一定期間の平均値を使う方法で、その月と前後の月を使う中央移動平均、その月とそれ以前の月を使う後方移動平均、その月とそれ以後の月を使う前方移動平均があると説明されています。同じ考え方を、週や日の単位にも当てはめられます。

発注で使えるのは後方移動平均です。中央移動平均はその後の週の数字が必要になるため、いちばん新しい週の値が出ません。先ほどの8週の例で4週の後方移動平均を出すと、直近の4週が13.0個、その前の4週が11.5個になります。売れ方は上向きです。

ここで気をつけたいのは、直近4週の移動平均13.0個が、いちばん新しい週の実績16個より低いことです。移動平均はその前の3週ぶんを一緒に平均するので、直近の動きに遅れて付いてきます。上向きの品目で移動平均をそのまま発注数にすると、足りない状態が続きます。

同じ解説では、移動平均は季節調整の手法にも使われています。季節調整は、季節による変動を取り除いた数字を出すための処理です。統計局は、企業では消費の需要に季節性がある場合、季節性を含んだデータをもとに商品の生産量を決めたりする、とも書いています。発注に要るのは、季節の波を含んだままの数量のほうです。

DEMO

同じ曜日の販売数を入れて、平均と傾向を出してみる

同じ曜日の直近8週の販売数、曜日を混ぜた1日平均、朝に残っている在庫、発注の単位を入れると、8週の平均と最小・最大、4週の後方移動平均、発注数の目安を表示します。予測を計算する画面ではなく、Excelで作る表と同じ計算を確かめるための画面です。

同じ曜日の平均・幅・移動平均|発注数の目安まで

本文の試算例(9・12・10・15・11・13・12・16個、混ぜた平均8個、在庫3個)を初期値にしています。数字を入れ替えると、平均と移動平均の差がどう動くか確認できます。

触って動かせます
計算の中身
8週の平均は入力した8つの単純な平均です。移動平均は、その週を含む直近4週の平均(後方移動平均)で、最初の3週は計算できないため空欄になります。発注数の目安は、各行の見込む数から在庫を引き、発注の単位で切り上げた数です。
使っている前提
8週すべてが同じ営業形態の日であるものとして平均しています。臨時休業や催しの週が混ざっていると、平均も最小・最大も動きます。上向き・横ばい・下向きの判定は、直近4週と、その前の4週の差が8週平均の5%を超えるかどうかで分けた表示上の線で、統計上の基準ではありません。
確かめてほしいところ
初期値では、8週の平均が12.3個、直近4週の移動平均が13.0個、その前の4週が11.5個で、上向きと表示されます。移動平均の13.0個は先週の実績16個より低い数字です。発注の単位を6個入りに変えると、平均を目安にした発注数は12個、最大を目安にした発注数は18個になります。

※ この画面は数量の計算だけを行っています。廃棄や品切れの金額、天気や催しの影響は扱っていません。実際の記録に置きかえたうえで、外れた週の理由を別に残してください。

季節をまたぐときは、前年の同じ時期と比べる

直近8週の平均でまかなえるのは、8週のあいだ売れ方が大きく動かない品目です。夏物と冬物のように季節で入れ替わる品目や、年に数回しか出ない品目では、去年の同じ時期の記録を見ます。

統計局は、季節要因を考えなくて済む最も簡単な方法として、当月と前年同月を比較することを挙げています。あわせて、前年との比較であるため、前年に急激な変動があった場合は前年の動きに影響されること、動向をつかむのが遅れることを注意点として示しています。店の記録でも同じです。去年その時期に工事で休んでいた、去年は大きな催しがあった、といった年と比べると倍率が大きく狂います。

日付をそろえるか曜日をそろえるかも、先に決めておきます。給料日や月末のように日付で動く品目は日付をそろえ、週末に集まる品目は曜日をそろえます。去年の8月の第3土曜と今年の8月の第3土曜、という並べ方です。

前年と比べられない品目もあります。品揃えを入れ替えたり、価格を変えたりしたあとは、前年の数量が目安になりません。変化のあとで何週たまったかを数え、たまった範囲だけで平均を出し直します。

平均を出す前に、記録のほうを直す

平均の計算そのものは短い式で済みます。時間を取られるのは、その前の記録の整理です。中小企業基盤整備機構の経営ハンドブック過剰在庫を見直すは、過剰在庫が起きる原因の1つとして、返品された分が出荷済みとして新しく発注され、返品在庫と新たに発注した在庫が積み重なることを挙げています。返品と取消を引かずに平均を出すと、売れた数を多めに見積もることになります。

同じ資料は、ネット販売と実店舗で同じ商品を売っている場合に、販路が2つあるぶん余分に発注しがちで、適正な在庫を把握できないまま過剰在庫になりやすいことも挙げています。販路ごとに数字が分かれているなら、平均を出す単位も販路ごとにするか、合算する範囲を先に決めてください。

サイズや色の展開がある商品についても、同じ資料は、特定のサイズや色だけが売れ残りやすいこと、過去の実績から売れ残りやすいサイズや色は発注を少なくする調整が要ることを挙げています。合計の数量だけで平均を出しても、どのサイズを何個頼むかまでは決まりません。品目をどこまで分けて見込むかは、商品別の発注量の記事にまとめています。

当社が相談を受けるときに最初に確かめるのも、この整理がどこまで済んでいるかです。日付と数量が1行ずつ並んでいて、返品と休業日の扱いが決まっていれば、平均も移動平均もその日のうちに出せます。決まっていなければ、まずそこから一緒に決めます。

Excelで続けられる範囲と、仕組みにするときに決めること

紙と表計算ソフトで始められるのは、品目を絞った状態です。売上の大きい10〜20品目について、曜日の列、平均の列、直近4週の移動平均の列を作り、週に1回だけ数字を入れ替える。この形なら、毎週30分ほどの作業で回せます。費用もかかりません。

続かなくなる合図は、計算の難しさよりも集計の量に出ます。品目が増えて数字の貼り付けが月末にまとめて発生している、手順を知っている人が1人しかいない、先月から更新が止まっている。製造業からの在庫の相談に答えた中小機構のビジネスQ&Aは、製品のアイテム数が非常に多い場合には、市販の販売管理や在庫管理のソフトを活用することを勧めています。同機構の経営ハンドブックも、取扱商品量が多い場合は人手だけに頼らず、在庫管理システムの導入を検討すべきだとしています。

当社が開発中の手軽に使える需要予測AIは、日付と数量の2列があるCSVから28日先までの予測を幅つきで出します。曜日の列を足したり移動平均の式を入れたりする作業は要りません。リリース時期は未定です。CSVを1つお預かりして、予測に使える状態かを確認する相談は無料です。試験予測に費用がかかる場合は、始める前に金額をお伝えします。

発注表の画面まで作る場合、見積もりのために確認するのは3点です。対象の品目数と、レジや販売管理から日付と数量を書き出せるかどうか。そして、在庫の残数や発注の締切まで画面に載せるかどうかです。客数から日配品の数量を出す形は食料品店の発注表の開発プランに、品目ごとの発注点を毎晩の発注に使う形は飲食店の発注表アプリの開発プランに書いています。

表計算ソフトで足りる範囲

10〜20品目について、曜日別の平均と4週の移動平均を週1回だけ更新する形です。費用はかかりません。

仕組み化を考える目安

数字の貼り付けが月末の作業になった、手順を知る人が1人だけ、といった状態です。

データ確認

CSVを1つお預かりし、予測に使える記録かを確認してお返事します。この確認は無料です。

まとめ

発注数の目安に使うのは、同じ曜日だけを集めた平均と、その最小・最大です。曜日を混ぜた平均からは、曜日による差が消えます。

移動平均は傾向を確かめるための計算です。直近の動きに遅れて付いてくるので、上向きの品目では移動平均そのままの数量だと足りなくなります。季節をまたいで動く品目は、前年の同じ時期と比べます。

まず、売上の大きい1品目について、同じ曜日の直近8週を並べてみてください。平均と最小・最大の開きが、その品目でどれだけ余裕を持つ必要があるかの目安になります。

よくある質問

移動平均は何週ぶんで計算すればいいですか?

決まった週数はありません。週数を増やすほど数字は平らになり、売れ方の変化に気づくのが遅くなります。週数を減らすと直近の動きは反映されますが、1週だけの特殊な出来事にも動かされます。曜日別に見るなら4週から始めて、上向きと下向きの判断が毎週入れ替わるようなら週数を増やしてください。

同じ曜日の記録が4週ぶんしかありません。平均を出す意味はありますか?

目安としては使えます。ただし4回ぶんの平均なので、1回の特殊な日が平均を大きく動かします。平均だけを見ずに、最小と最大の開きを一緒に確認し、その開きぶんの余裕を持てるかで判断してください。記録がどれくらいの期間あればよいかは、記録の期間の記事で扱っています。

曜日別の平均と移動平均で数字が食い違ったときは、どちらを使いますか?

発注する数量は曜日別の平均から取り、移動平均はその数量を上下どちらに寄せるかの材料にします。移動平均が上向きなら平均より多め、下向きなら少なめに寄せます。寄せ方の考え方は、発注は多めにするか少なめにするかの記事にまとめています。

表計算ソフトの式を作るところから手伝ってもらえますか?

ご相談の中で一緒に組み立てます。ただ、式そのものより、どの日を平均から外すか、返品や休業日をどう数えるかを決めるほうが時間のかかる部分です。手元のCSVを見ながら、その決めごとの整理から始めます。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

Excelの発注表が重くなってきた、という段階から相談できます

曜日別の平均までは出しているが、この先どう使えばいいか分からない。品目が増えて数字の貼り付けが追いつかない。返品や休業日の扱いが人によって違う。そんな状態でご相談いただけます。レジや販売管理から書き出したCSVを1つ見て、どこまでを表計算ソフトで続けて、どこからを仕組みにするかを分けるところから始めます。資料をそろえてからでなくて構いません。

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