飲食・食品の業務
飲食店で音楽を流すのに、手続きは要る?
CDや音楽配信の曲を店内で流すなら、権利者の許諾が要ります。お金を取らなくても、店の営業は「営利」にあたるからです。一方、家庭用のテレビやラジオで放送をそのまま流すことは、許諾なしでできます。
この記事でわかること
- 著作権法では、CDなどの録音を店のお客さんに聞かせることも「演奏」にあたります。ネットで配信される曲を店で流すことは「公の伝達」にあたり、どちらも権利者の許諾が要ります。
- 許諾なしで演奏できる例外は「営利を目的とせず、料金を受けず、出演者に報酬を払わない」場合に限られ、営業中の飲食店は当てはまりません。
- テレビやラジオの放送を、通常の家庭用の受信機でそのまま流すことは、営利目的の店でも許諾なしにできます。画面を大きく映す特別な装置を使うと、別の権利がかかります。
- 許諾は、曲の権利を管理する団体(日本音楽著作権協会=JASRACなど)に申し込み、使用料を払って受けるのが一般的な方法です。曲や使い方によって窓口が違うことがあります。
CDや配信の曲を店で流すのは、許諾が要る使い方
著作権法の第22条は、曲を「公衆に直接聞かせることを目的として」演奏する権利を、作詞家や作曲家などの著作者に与えています。第2条第7項で、この「演奏」には録音されたものを再生することも含まれるとされていて、文化庁の著作権テキスト(令和8年度版)も、CDやDVDから音楽を再生することに権利が働くと説明しています。店内のお客さんに聞かせるBGMは、これにあたります。
音楽配信サービスや動画サイトのように、ネットで送られてくる曲を店のスピーカーで流す場合は、第23条第2項の「公の伝達」にあたります。著作権テキストは、インターネットで送られる著作物をディスプレイなどで公衆に伝える行為をこの例に挙げています。CDでも配信でも、店で流すなら許諾が要るという点は同じです。配信サービスを使うときは、その利用規約が店での再生を認めているかも確かめてください。
「無料のBGMだから大丈夫」にはならない
著作権法の第38条第1項には、許諾なしで演奏できる例外があります。著作権テキストが挙げる条件は、公表された曲であること、営利を目的としないこと、聞く人から料金を受けないこと、出演者などに報酬を払わないことです。学校の学芸会や公民館の発表会がその例です。
飲食店は、BGMそのものにお金を取っていなくても、店の営業は営利を目的としています。そのため、この例外は使えません。ライブや弾き語りのイベントを店で開く場合も、生の演奏として同じ第22条の権利がかかります。
テレビやラジオの放送は、家庭用の受信機ならそのまま流せる
第38条第3項は、放送や、放送と同時にネットで配信される番組を、受信機で公衆に伝える場合の例外です。前半は非営利・無料が条件ですが、後半で「通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする」と定めています。著作権テキストは、喫茶店に置いてあるテレビを例に挙げ、通常の家庭用の受信機を使う場合は営利目的でもよいと説明しています。
注意したいのは、許諾が要らないのは「放送をそのまま流す」場合だという点です。録画した番組や、録音したラジオを後で流すのは放送の伝達ではないため、この例外の外になります。
大きなスクリーンでテレビを映す場合
第100条は、テレビ放送を受信して「影像を拡大する特別の装置」で公に見せる権利を、放送局に与えています。著作権テキストは、超大型テレビやオーロラビジョンをその例にしています。スポーツ中継の観戦イベントなどで大きく映す計画があるときは、放送局への確認が必要になることがあります。
有線のBGMサービスや店舗向けの配信サービス
店舗向けのBGMサービスを契約する場合、店で流すことについての手続きを、サービス側と店のどちらがするかは契約によって変わります。契約書や利用規約で、店内での再生に必要な手続きが含まれているかを確かめてください。
許諾は、曲を管理している団体に申し込む
著作権テキストによると、作詞家や作曲家などから権利の管理を任された「著作権等管理事業者」は、利用する人からの申請を受けて許諾を出し、使用料を受け取って権利者に分配しています。テキストは音楽の例として日本音楽著作権協会(JASRAC)を挙げ、各種の施設での利用など、使い方ごとの使用料規程があると説明しています。
同じテキストは、曲や使い方によってはJASRACが管理していない場合や、別の管理事業者に任されている場合があるとしています。流したい曲が決まっているなら、管理している団体に確かめてから申し込みます。管理事業者の一覧は、文化庁の著作権等管理事業者のページから確かめられます。使用料の金額や申し込み方法は、それぞれの団体の案内で確かめてください。
「著作権フリー」とされる音源でも、店での利用を認めているか、クレジット表記などの条件があるかは、配布元ごとに違います。使う前に利用条件を読んでおきます。
開店前や改装のときに、流す音楽の決め方も確かめておく
ここからは当社の提案です。店で音楽を流す方法は、開店や改装、店長の交代のときに変わりやすい部分です。「CDを流しているのか、配信サービスなのか、テレビやラジオなのか」と「誰と何の契約をしているか」を1枚にまとめておくと、引き継いだ人がそのまま確かめられます。
配信サービスや管理団体との契約が年ごとに更新されるなら、更新の時期も同じ紙や共有のメモに書いておくと、気づかないうちに期限が切れることを防げます。
開店準備や引き継ぎで確かめることを、まとめておきたいときに。
許可や届出、契約の更新時期が店長の記憶にしかない、改装や代替わりの前に確かめることを一覧にしたい。そうした整理から相談できます。法令の解釈や手続きの判断は、所管の窓口や管理団体に確かめていただく前提で、店に合う記録の形を一緒に考えます。
