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飲食・食品の業務

エゾシカ肉を、店のメニューに出したい

出せます。守ることは3つです。食肉処理業の許可を受けた施設で解体された肉を仕入れること、中心部が75℃で1分以上になるまで加熱すること、生や半生では出さないことです。知り合いの猟師が自分で解体した肉は、店では使えません。

この記事でわかること

  • 厚生労働省の指針は、飲食店が野生鳥獣肉を出すとき、食肉処理業の許可施設で解体された肉を仕入れ、中心部75℃で1分以上(または同等以上)加熱し、生食用には決して出さないよう求めています。
  • 仕入れのときは処理施設から捕獲や処理の情報を受け取り、色やにおいを確かめます。添付された記録は保存します。保管は10℃以下で、家畜の肉と分けて置きます。
  • 店の厨房でシカを解体するなら、飲食店営業の許可に加えて食肉処理業の許可が要ります。
  • 北海道には、衛生管理の基準を満たす処理施設を道が認証する制度があり、認証施設の一覧が公開されています。毎月第4火曜日の「シカの日」には参加店の登録もあります。

仕入れ先は、食肉処理業の許可を受けた施設に限る

野生のシカやイノシシの肉は、牛や豚と違って、えさや健康状態が管理されていません。厚生労働省は2014年11月に野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)を出し、狩猟から処理、販売、飲食店までの各段階でやることを示しました。

飲食店に関わるのは「第5 加工、調理及び販売時における取扱」です。仕入れる肉は、食肉処理業の許可を受けた施設で処理されたものに限られます。ソーセージやハムのような加工品を仕入れる場合も、許可施設で解体された肉を使い、食肉製品製造業の許可を受けた施設で作られたものを選びます。

北海道の資料「そのジビエ、流通させて大丈夫?」も、許可施設で解体された肉を仕入れなければならないとしたうえで、全国の保健所が夏と年末に、不法に流通したジビエの取り締まりを行っていると書いています。猟をする知り合いから「解体した肉を分けるから店で使って」と言われても、店の料理には使えません。

仕入れるときに確かめることと、残す記録

指針は、仕入れのときに処理施設の責任者から、その個体の狩猟と処理についての情報を受け取るよう求めています。届いた肉は色やにおいに異常がないか、異物が付いていないかを見て、異常があれば仕入れをやめます。調理の途中で異常に気づいた場合も、すぐに使うのをやめて捨て、仕入れ先に連絡します。

肉に添付されている記録は、流通期間などに応じて適切な期間保存します。何日分、何年分と一律の期間は指針に書かれていないので、店の衛生管理計画で決めておき、保健所に確かめておくと安心です。

2021年6月から、飲食店もHACCPに沿った衛生管理が求められています。ジビエを始めるときは、いまの衛生管理計画の中に、ジビエの仕入れと加熱の確認を書き足すのが自然な形です。

加熱は中心部75℃で1分以上。保管は10℃以下で、家畜の肉と分ける

指針は、飲食店で出す野生鳥獣肉を、中心部の温度が75℃で1分間以上、またはこれと同等以上の効力がある方法で加熱するよう求め、生食用としては決して出さないとしています。ジビエは、肉を見て異常がなくても、細菌や寄生虫に高い割合で感染していると指針は説明しています。

厚生労働省は2019年12月の通知で、札幌市内の飲食店で、加熱が不十分なクマ肉のロースト(推定)を原因とする旋毛虫(トリヒナ)食中毒が起きたことを示し、ロースト料理などで十分に加熱するよう改めて求めました。同じ通知の別添には、2016年に茨城県の飲食店で熊肉のローストを食べた21人が発症した例も載っています。中がピンク色のローストやたたきは、ジビエでは出さないメニューと考えてください。

保管の温度

野生鳥獣肉は10℃以下で保存します。細かく切って凍らせ、容器包装に入れたものは、マイナス15℃以下で保存します。

家畜の肉と分ける

保管するときは、牛・豚・鶏の肉と区別して置きます。指針は、まな板や包丁などの器具を使い分けることも勧めています。

器具の洗浄と消毒

野生鳥獣肉の処理に使った器具や容器は、処理が終わるたびに洗い、83℃以上のお湯か、200ppm以上の次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒して、衛生的に保管します。

中心温度の確かめ方

加熱の確認は、中心温度計で測るのが確実です。測った温度と時刻を毎日の衛生管理の記録に残しておくと、メニューを担当する人が替わっても同じ確認を続けられます。

店でシカを解体したいなら、別の許可が要る

枝肉や丸ごとのシカを仕入れて、店の厨房で解体したいと考える人もいると思います。指針は、飲食店営業の許可を受けた施設で解体する場合でも、必要な設備を置いたうえで、飲食店営業の許可に加えて食肉処理業の許可を受けるよう求めています。

必要な設備や手続きは、店のある地域の保健所に相談します。北海道のエゾシカ活用支援ポータルサイトには、処理施設を開設したい人向けの衛生処理マニュアルや、小規模なジビエ処理施設向けのHACCPの手引書への案内がまとまっています。

北海道なら、認証施設の一覧と「シカの日」が手がかりになる

北海道は2015年12月にエゾシカ肉処理施設認証制度を作り、2016年10月から運用しています。認証の基準は、道内の食肉処理事業者であること、道のエゾシカ衛生処理マニュアルを守っていること、HACCPに基づく衛生管理を行っていること、出荷する製品のトレーサビリティ(どの個体の肉かたどれること)があることなどです。認証は法律で義務付けられたものではありませんが、仕入れ先を探すときの目安になります。

道の認証施設一覧には、振興局ごとに施設の取扱商品、注文方法、連絡先が載っています。ブロック肉、スライス肉、ひき肉、加工品など、施設によって扱う形が違うので、作りたい料理に合う形で買えるところを探せます。道の認証制度のチラシに載っている一覧では、2026年9月3日現在で24施設です。

北海道は毎月第4火曜日を「シカの日」と決めています。参加店募集要項によると、条件を満たす飲食店や販売店は参加店として登録でき、のぼりなどの店頭の資材の無料配布や、道の「シカの日」オフィシャルサイトでの紹介があります。エゾシカ肉の加工品だけを出す店でも登録できます。申し込みは店のある地域の振興局の環境生活課です。

最初は、いつものメニューの一皿から

ここからは当社の提案です。ジビエを始めるといっても、専門店になる必要はありません。たとえば、ふだん出しているハンバーグや煮込み、カレーの肉をエゾシカに替えた一皿を、シカの日だけ出してみる形なら、仕入れる量も少なく、中まで火を通す料理なので加熱の確認もしやすくなります。認証施設の一覧には、ひき肉や味付けのジンギスカンを扱う施設もあります。

お客さんの反応を見て続けるかを決めるなら、出した日と売れた皿数、仕入れた量を簡単に記録しておくと、次の仕入れ量を決めやすくなります。仕入れの記録、中心温度の記録と同じ場所に残しておけば、衛生管理の記録としても使えます。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

新しいメニューの仕入れや記録を、店に合う形で整えます。

ジビエのような新しい食材を試したい、仕入れと温度の記録を紙からスマホに移したい、限定メニューの売れ行きを残して次の仕入れに使いたい。何から決めればいいか分からない段階でもかまいません。いまの仕入れと記録のつけ方をうかがい、続けやすい形を一緒に考えます。

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