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飲食・食品の業務

小さな飲食店のHACCP、何をすればいい?

小さな飲食店のHACCPは、業界団体の手引書に沿って「計画を決める・毎日記録する・月に1回見返す」の3つで対応できます。計画は手引書のひな形を使って作れます。記録は1日の最後に1行、紙でもスマホのアプリでも始められます。

この記事でわかること

  • 2021年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められています。飲食店などの小規模な営業者等は、業界団体が作り厚生労働省が内容を確認した手引書に沿って行えば対応できます。
  • 衛生管理計画は2つです。手洗いや冷蔵庫の温度などの「一般的衛生管理」と、メニューを調理方法で3つのグループに分けて確認方法を決める「重要管理」です。
  • 毎日の記録は、1日の最後に良・否と気づいたことを書く形です。月に1回ほど記録を見返し、同じ問題が続いていれば原因と対応を考えます。記録は1年間程度保管します。
  • 記録用紙は手引書に様式があり、厚生労働省が2026年6月に公開したスマートフォン・タブレット用のアプリでも計画と記録をつけられます。

飲食店に求められているのは「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」

厚生労働省のHACCPのページによると、令和3年(2021年)6月1日から、原則としてすべての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理に取り組むことになりました。HACCPは、食中毒菌や異物の混入といった危害の原因を事業者自身が把握し、特に重要な工程を管理する衛生管理の方法です。

ただし、すべての店に同じ水準を求めているわけではありません。小規模な営業者等向けのページでは、飲食店営業や喫茶店営業を行う人などを「小規模な営業者等」に挙げ、取り扱う食品に応じた「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を求めています。業界団体が作成し、厚生労働省が内容を確認した「手引書」の内容を実施すれば対応できる、とされています。

同じページでは、小規模な営業者等が行うことを6つにまとめています。手引書を読んで自分の業態の危害の原因を理解する、ひな形で衛生管理計画をつくる、従業員に伝える、記録様式で記録する、推奨された期間保存する、定期的に見返して計画を見直す、の6つです。

衛生管理計画は「いつ・どのように・問題があったとき」を決めるだけ

一般的な飲食店向けには、公益社団法人日本食品衛生協会の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」があります。厚生労働省の業種別手引書の一覧から、概要版(PDF)と詳細版(PDF)を読めます。現在の版は2024年1月の改訂第3版です。以下はこの手引書の内容の要約です。

計画の1つ目は「一般的衛生管理のポイント」です。次の7項目について、いつ行うか、どのように行うか、問題があったときにどうするかを、手引書の様式に書き込みます。手引書は、日頃から調理場で行っていることをこの7項目に照らし合わせて計画を立てるよう勧めています。

原材料の受入の確認

納品のときに、外観、におい、包装の状態、期限や保存方法の表示を確認します。記入例では、問題があれば返品・交換するとしています。

冷蔵庫・冷凍庫の温度の確認

温度計で庫内の温度を確かめます。記入例の目安は冷蔵10℃以下、冷凍−15℃以下です。異常があれば原因を確かめ、食材の状態によっては使わないか、加熱して提供します。

交差汚染・二次汚染の防止

冷蔵庫の中の保管の状態を確認し、まな板や包丁を用途別に使い分けます。

器具等の洗浄・消毒・殺菌

まな板、包丁、ボウルなどを使うたびに洗浄・消毒します。

トイレの洗浄・消毒

便座、水洗レバー、手すり、ドアノブなど、手が触れる場所を入念に消毒します。

従業員の健康管理・衛生的な作業着

始業前などに、従業員の体調、手の傷の有無、着衣を確認します。記入例では、下痢などの症状がある人は調理作業に就かせないとしています。

衛生的な手洗い

トイレの後、調理場に入る前、盛り付けの前、生肉や生魚を扱った後、お金を触った後など、手を洗うタイミングを決めておきます。

重要管理は、メニューを調理方法で3つに分けて考える

計画の2つ目は「重要管理のポイント」です。食中毒菌が増えやすい10〜60℃の温度帯に注目して、店のメニューを3つのグループに分け、グループごとに確認方法と、問題があったときの対応を決めます。手引書の記載例から、代表的なメニューを並べます。

第1グループ(加熱しないもの)

刺身、冷奴など、冷蔵品を冷たいまま提供する料理です。加熱で菌を減らせないため、冷蔵庫から出したらすぐに提供する、といった確認方法を決めます。

第2グループ(加熱して熱いまま提供するもの)

ハンバーグ、焼き魚、焼き鳥、唐揚げなどです。手引書は、中心部を75℃で1分以上加熱すると食肉などにいる多くの菌が死滅すると説明しています。毎回温度を測る代わりに、十分に火が通ったときの火の強さ・時間・見た目を確かめておき、日々はその見た目などで確認する方法が示されています。

第3グループ(加熱後に冷ます、または冷まして再加熱するもの)

カレー、スープ、ポテトサラダなどです。加熱後に室温で長く置くと菌が増えるため、すばやく冷ますことが重要です。記載例では、2時間以内に20℃以下まで冷ませなかったら提供しない、といった対応が書かれています。

記録は1日の最後に、見返しは月に1回

手引書の記録用紙は、1か月分を1枚の表にした日誌の形です。1日の最後に、一般的衛生管理の7項目と、重要管理の各グループについて良・否をつけ、冷蔵庫・冷凍庫の温度を書き込みます。問題があった日は、何が起きてどう対応したかを特記事項の欄に書きます(記載例では、小麦粉の袋が破れていたので返品し、午後に再納品された、という書き方です)。

月に1回ほど、できれば日々のチェックをした人とは別の人(店主など)が記録を見返します。手引書の振り返りの様式は、毎日正しく記録できたか、否が多かったところやクレームが多かったところはどこか、その理由と改善したことを書く形です。メニューや原材料、納入業者、設備が変わったときも計画を見直します。

記録は1年間程度保管するよう、詳細版に書かれています。自分の業態に合う手引書が見つからない場合は、原材料や工程が似た業種の手引書を参考にし、必要に応じて管轄の保健所の食品衛生監視員に相談するよう、厚生労働省のページで案内されています。

紙で始めるか、厚生労働省のアプリを使うか

紙で始めるなら、手引書の詳細版の巻末にある計画・記録・振り返りの様式(別紙1〜3)を印刷して使えます。冷蔵庫の横や厨房の決まった場所に置いておけば、閉店作業の流れで記録できます。

スマートフォンやタブレットで記録したい場合は、厚生労働省が2026年6月5日に公開した一般飲食店事業者向けHACCP衛生管理記録アプリがあります。マニュアルによると、手引書の記入例が初期設定で入っていて、自店の内容に合わせて直しながら計画を作れます。冷蔵庫・冷凍庫は合わせて5台まで、チェックする人は3名まで登録できます。日々の記録は2日前までさかのぼって入力でき、計画・記録・振り返りは1か月分ずつCSVファイルで書き出せます。記録したデータはアプリ内で2年間保存され、2年を過ぎると順次削除されるとあるので、長く残したい記録は書き出して保管しておきます。

以下は当社の考えです。1店舗で手引書のとおりに記録するなら、まずは紙かこのアプリで十分です。複数の店舗の記録を本部でまとめて確認したい、仕込みや発注の記録と一緒に管理したい、記録の付け忘れをその日のうちに知らせたい、といった要望が出てきたら、専用の仕組みを考える理由になります。給食施設向けに衛生記録をまとめる想定は、検食簿・衛生記録システムの開発プランで紹介しています。

よくある質問

従業員が多い飲食店でも、手引書に沿った方法でよいのですか?

厚生労働省の小規模な営業者等向けのページでは、「飲食店営業又は喫茶店営業を行う者その他の食品を調理する営業者」が、食品の取扱いに従事する人数が50人未満の事業場とは別の項目として挙げられています。自店がどちらに当たるか迷う場合や、セントラルキッチンで製造も行っている場合などは、管轄の保健所に確認してください。

中心温度計がないと、HACCPに対応できませんか?

手引書の重要管理の記載例では、加熱する料理は火の強さや時間、肉汁、見た目などで加熱が十分かを判断する確認方法が示されています。十分に加熱できたときの火の強さや時間、見た目を事前に確かめておくことが前提です。低温調理のように温度と時間の管理が必要な料理は、記載例でも中心温度計と時計で確認する方法になっています。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

紙の記録を、店の流れに合う形へ。

衛生管理の記録が仕込みや発注の記録と別々になっている、複数の店舗の記録をまとめて見たい、既製のアプリで足りるか分からない。そんな段階でも相談できます。いまの記録の付け方を聞きながら、紙のまま続ける部分と仕組みにする部分を一緒に整理します。

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