EvoQuest
EvoQuest Food需要予測AI 2026.08

SCENARIO ── WAGASHI FAIR SHIPMENT CASE

売れ行きが分かるのは、初日の夜。
札幌からの追加が届くのは、3日目の朝。

札幌に自店を構え、年に5回ほど百貨店の催事や北海道物産展に出る和菓子店を想定します。会場で職人が包む豆大福と、工房から送るどら焼き・最中が主力です。催事の売上は自店の1ヶ月ぶんに迫ることもあり、いまや欠かせない販路になっている一方、送る数の決め方は出発前の「多めに持っていくか」だけ。売り切れても札幌からの補充は翌々日にしか着かず、最終日には残った箱を抱えて帰ります。初日の実績で会期後半の発送を品目別に確定する追加発送の画面と、催事のたびに記録が厚くなる催事台帳を、EvoQuest Foodの業務システムとして形にする開発プランです。

想定領域
催事・物産展の搬入数予測 / 菓子店の業務改善
担当範囲
要件整理・予測設計・画面設計・実装
想定対象
従業者6人ほどの和菓子店(自店1店舗 + 年5回ほどの催事出店)
想定期間
設計〜納品 約 2 ヶ月(次の催事から逆算して開始)

OVERVIEW

プロジェクト概要

催事や物産展への出店を検索して出てくるのは、出店枠を仲介するサービスの案内、出店の心構えを説いた解説記事、消化仕入れという契約形態の説明です。数量について書いてあるのは「売り切れはもったいないので十分に用意しましょう。来客数は催事の担当者に聞いてみましょう」まで。日別の搬入数を何を根拠に決めるかを書いたページは、探しても出てきません。ここが店主の勘に任されたままです。

催事の在庫は、ほとんどの場合すべて店側の持ちものです。百貨店との契約は売上の一定割合を手数料として払う消化仕入れが一般的で、売れ残っても百貨店は買い取りません。売り切れれば区画が空いたまま手数料の対象になる売上だけが止まり、余れば箱ごと札幌へ持ち帰ることになります。しかも会場も会期も毎回違うので、自店の棚なら1年で300日ぶん貯まる販売記録が、催事では年に30日ぶんしかない。データの薄さと在庫の重さが、同じ場所で重なっています。

この設計のゴールは2つです。初日の閉場後に会期後半の発送を確定する一回が、催事のたびに必ず閉じること。そして会場が毎回違っても、催事を重ねるほど判断材料が厚くなる形で記録が残ることです。

CHALLENGE

課題

  • 01 会場も会期も毎回違う。春は道内百貨店で5日間、秋は本州の物産展で6日間。区画の広さも客層も来場の規模も違うので、前回の売れ数を次の会場へそのまま持ち込めない。「初めての会場」が毎回続く。
  • 02 補充が2日がかりで、直せる機会がほぼ一度しかない。売れ行きを見てから工房へ頼んでも、作って、チルド便に載せて、会場に着くのは翌々日の朝。6日間の会期なら、初日の結果を反映できる追加は実質一度だけになる。
  • 03 品目ごとに、余ったときの損の形が違う。会場で包む豆大福は当日限りで閉場時に廃棄。どら焼きは賞味5日なので会期の途中なら翌日に回せる。最中は賞味30日で、持ち帰れば自店で売れる。いまは全品「切らすのが怖いから多め」で送っている。
  • 04 売り切れの損が数字に残らない。棚が空いた時間は売上が立たないだけで、記録にはどこにも表れない。閉場の2時間前にどら焼きが切れた日も、帰ってしまえば「よく売れた催事だった」という記憶になる。

APPROACH

アプローチ

設計の要は、初日の閉場後の一度の決定です。品目別の追加発送数を確定して工房へ送り、工房は翌日に作って夕方の便に載せ、荷は3日目の朝に会場へ着きます。締切を初日の夜に置くのは、チルド便と製造の都合からの逆算です。ここを逃すと、次に打てる追加は最終日にしか着きません。秋の物産展のように会期の後半へ土日が来る日程なら、初日の夜の箱数がそのまま山の高さを決めることになります。

予測の前に、確定している数を使い切ります。百貨店のオンライン事前予約と地方発送の注文は受取日つきで決まっています。実演の豆大福は、1日の上限が職人の手の速さで決まっているので、予測の出番は「材料を何日ぶん送るか」だけです。会場の来場規模・区画の位置・実演の可否・催事全体の前年実績は、主催者への確認で開催前に埋まります。幅のある予測に任せるのは、そこから先の店頭売りだけです。

初めての会場の扱いが、この設計の中心です。学習の単位を会場ではなく「会期日」に取ります。初日・平日・土曜・日曜・最終日という日の種類ごとの売れ方のパターンは、会場が違っても案外似ています。初日に開店前から列ができ、平日の中日に落ち着き、土日に山が来て、最終日は閉場が早い。この形を過去の催事すべてから学び、会場ごとに変わる規模の水準だけを、主催者から聞いた確定情報で仮置きして、初日の実績で置き直します。年5回の催事も、会期日で数えれば年30日ぶんの学習データになります。

送る量は、品目の賞味日数と残りの会期日数を比べて決めます。最中のように残りの会期より賞味がずっと長い品は、余っても持ち帰って自店で売れるので、幅の上限側で送ります。どら焼きは会期の前半なら翌日に回せますが、後半に送る分は持ち帰っても売り切る日数が残らないため、下限側へ絞ります。豆大福は当日の材料で職人がその場で調整します。同じ品でも会期のどの日に着くかで倒す方向が変わる、というのがこの商売の形です。

効果は、金額と時間で測ります。最終日に持ち帰った箱数×原価と返送の送料、持ち帰ったのに賞味が足りず自店で売り切れなかった廃棄額。売り切れた品は、その時刻から閉場までの時間帯の売れ方から、逃した売上を推計として積みます。それから、追加が売場に並ぶ日。電話のやりとりで4日目になっていた追加が3日目の朝に変わったか。この3つを会期レポートに並べ、次の催事の初回搬入へ反映します。

CONSULTATION

次の催事の日程が決まっているなら、逆算はもう始められます。

前回の催事のレジ記録と宅配便の送り状があれば、
日の種類ごとの売れ方はある程度まで復元できます。
まずは過去の催事を数字で起こすところから、ご相談ください。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。会場へ持ち込むタブレットと工房のパソコンで使う前提の構成です。会場・品目・個数・金額はすべて想定例で、実在の店舗・百貨店・実績ではありません。

01. 開催前に、初回搬入を前半2日ぶんで確定する

催事の2日前に開く画面です。主催者への確認で埋めた会場の確定情報と、過去の催事から出した日の種類ごとの売れ方をもとに、品目別の初回搬入数を決めます。送るのは前半2日ぶんと実演材料だけ。後半ぶんをあえて空欄のまま出発するのが、この計画の形です。

搬入計画
設計のポイント
全期間ぶんを一度に送らない。後半は初日の実績を見てから決める前提で、初回は前半2日ぶんに絞る。
確定を先に埋める
事前予約・地方発送の注文・実演の上限を先に固め、幅のある予測に任せる範囲を狭くする。
初見の会場の水準
来場規模・区画の位置・催事全体の前年実績を主催者に確認し、仮の水準として使う。

02. いまのペースが、この日の種類として速いか遅いか

会期中に毎日いちばん開く画面です。時間帯ごとの売上を、同じ日の種類(平日・土日など)の売れ方のパターンと重ねて、いまのペースの速い遅いを表示します。品目別の残数から売り切れの見込み時刻を出し、箱売りへの誘導などの打ち手と、閉場後の残数の締めまでこの画面で行います。

当日ダッシュボード
設計のポイント
比べる相手は「同じ日の種類」。きのうの初日と比べると、平日の落ち着きを不振と取り違えるため。
売り切れの記録
切れた時刻はボタンで残す。閉場までの時間帯の売れ方から、逃した売上を推計するための材料になる。
閉場後の締め
品目別の残数を締めると、その日の実績が催事台帳へ自動で積まれる。入力は閉場後の1分だけ。

03. 初日の夜、会期後半の箱数を確定して工房へ送る

初日の閉場後に開く、この設計の中心の画面です。初日の実績で水準を置き直した後半4日ぶんの予測が品目別の幅で出て、賞味日数と残りの会期から品目ごとの送る量の目安が付きます。締切は工房が翌日の製造に入る時刻。確定した箱数はそのまま工房への製造・発送指示になります。

追加発送
設計のポイント
決定は「初日の夜に一度」に集める。便が間に合う唯一の夜に、判断の材料をそろえて置く。
品目で倒す方向を変える
持ち帰って自店で売れる最中は上限側、後半着のどら焼きは下限側、豆大福は材料の日数だけ。
締切の根拠
工房の製造開始とチルド便の集荷から逆算した時刻を画面に出す。過ぎると着くのは最終日になる。

04. 会場が違っても、記録は日の種類で貯まる

過去の催事の記録を並べた画面です。催事ごとの売上・持ち帰り・売り切れに加えて、全催事の実績から出した日の種類ごとの売れ方のパターンを持ちます。天気やテレビ紹介など、数字が外れた日の理由もここに残します。次の催事の前に主催者へ確認する項目の一覧も、この画面から出します。

催事台帳
設計のポイント
学習の単位は会期日に取る。年5回の催事が、初日5回ぶん・土日10回ぶんの記録として貯まる。
外れた日の理由
雨・隣区画の行列・テレビ紹介。数字だけでは説明のつかない日に、ひとこと残せる欄を持つ。
確認項目の一覧
会期・区画・実演の可否・前年実績など、主催者に聞く項目を型にして、聞き漏らしをなくす。

05. 持ち帰りの原価と、売り逃しの推計を並べる

催事が終わったあとに開く画面です。品目別の搬入数・売れ数・持ち帰り・廃棄額に、売り切れた品の逃した売上の推計を並べます。手数料を引いた手取りもここで出ます。「多めに送って持ち帰る」と「絞って早く切れる」のどちらの損が大きかったかを金額で確かめ、次回の初回搬入に反映します。

会期レポート
設計のポイント
持ち帰りは目に見えるが、売り切れで逃した売上は推計しなければ残らない。両方を同じ画面に置く。
推計の見せ方
逃した売上には推計と明記し、もとにした売り切れ時刻と時間帯の売れ方を画面から確かめられる。
次回への反映
品目別の直しは催事台帳に残り、次の搬入計画の初期値になる。記録が次の判断の入口になる。

OUTCOME

変わったこと

仕組みが運用に乗ったあと、催事の決め方が3つの点で変わる想定です。

01

初めての会場でも、過去の催事が判断材料になる

Before会場が変わるたび、頼れるのは前回の記憶だけ。「あのときは足りた」「あのときは余った」が、規模の違う次の会場では役に立たなかった。
After日の種類ごとの売れ方のパターンが催事のたびに厚くなり、会場ごとに違うのは規模の水準だけ、という形で引き継がれる。

初回の催事は幅を広めに出し、主催者から聞いた確定情報で水準を仮置きします。2回、3回と重ねるごとに幅は狭められます。

02

追加発送が、電話の相談から箱数の確定に変わる

Before2日目の朝に工房へ電話し、「どら焼きあと何箱いける?」の相談から始まる。その日の便に間に合わず、追加が並ぶのは4日目だった。
After初日の閉場後に品目別の箱数で確定し、荷は3日目の朝に届く。会期の後半に土日が来る催事なら、山に1日早く間に合う。

決定が1日早まる根拠は、予測よりも段取りです。相談の往復をなくし、便の締切から逆算した時刻に判断を集めます。

03

最終日の持ち帰りが、次の催事の数字として残る

Before残った箱を抱えて帰り、「まあ、こんなものか」で終わっていた。持ち帰りが何箱で、いくらぶんだったかは誰も数えていない。
After持ち帰りの箱数×原価と返送の送料、自店で売り切れなかった廃棄額が会期レポートに出て、次回の初回搬入の初期値へ反映される。

売り切れで逃した売上の推計も同じ画面に並びます。持ち帰りだけを見て絞りすぎると、逃した側の損が見えなくなるためです。

PROCESS

2ヶ月の進め方

次の催事の日程から逆算して進めます。会期の2週間前までに画面がそろうように、約2ヶ月を想定します。札幌市内なら店舗と工房へ伺い、道外の会場の話はオンラインでも進められます。月の区切りで実際に触れるものをお渡しし、店で使ってみた感想を次の作業へ反映します。

1
MONTH 01 / 過去の催事の復元 + 品目台帳

レジの記録と送り状から、過去の催事を数字で起こす

過去の催事のレジ記録・宅配便の送り状・百貨店の精算書を集め、催事ごとの日別売上と搬入数を復元します。品目ごとの賞味日数・原価・荷姿(1箱に何個・1便に何箱)を一覧にし、日の種類ごとの売れ方のパターンを初版として出します。あわせて、主催者へ確認する項目の型を店主と作ります。

  • 店舗と工房でのヒアリング(2〜3回)
  • 過去の催事のレジ記録・送り状・精算書の整理
  • 品目の賞味日数・原価・荷姿の一覧化
  • 日の種類ごとの売れ方の初版と確認項目の型づくり
2
MONTH 02 / 5画面の開発 + 催事1回での実戦

次の催事で、初回搬入から会期レポートまで一巡させる

搬入計画・当日ダッシュボード・追加発送・催事台帳・会期レポートの5画面を開発し、次の催事で実際に使います。初回搬入と初日の夜の追加発送は、画面の提案と店主の判断を並べて記録し、外れた点をその場で確かめます。会期レポートの初回を一緒に見て、幅と品目ごとの倒す方向を調整してから納品します。

  • 5画面の開発と工房側の受け取り画面の確認
  • 次の催事での並行運用(初回搬入〜追加発送〜締め)
  • 会期レポートの初回レビューと幅の調整
  • 催事台帳への記録の引き継ぎ + 納品

FAQ

よくある質問

  • Q1 会場が毎回違うのに、予測は当てになるのですか?
    会場単位で当てにいく設計にはしていません。売れ方のパターンは日の種類ごとに過去の催事すべてから学び、会場ごとに変わる規模の水準は、主催者から聞いた確定情報で仮置きして初日の実績で置き直します。初めての会場ほど幅は広く出ますが、その幅を品目ごとの倒す方向で受けるのがこの設計です。余っても自店で売れる品は上限側、持ち帰れない品は下限側。外れたときの損を小さくする側から決めます。
  • Q2 会場で包む豆大福も予測するのですか?
    販売数の上限は予測しません。実演の豆大福は職人の手の速さで1日に包める数が決まっていて、たいてい閉場前に売り切れます。予測に決めさせるのは「あんと豆を何日ぶん送るか」という材料の量だけです。上限が手で決まっている品に予測をかぶせないのは、確定している数に予測を混ぜないという、この設計全体の原則によります。
  • Q3 初日の夜を逃したら、もう手はないのですか?
    便の速さは変えられないので、2度目の追加は最終日の朝にしか着きません。売り切りの利く品なら使える日もありますが、原則としては当てにしない設計です。だからこそ判断を初日の夜の一点に集め、締切の時刻を画面に出します。逃したときの損の大きさが分かっているほど、その夜の判断は軽くなくなります。
  • Q4 百貨店ごとに手数料や条件が違っても使えますか?
    使えます。手数料率・会期・営業時間・搬入経路・冷蔵庫の広さといった条件は、催事ごとにヒアリングシートの項目として持ちます。会期レポートの手取りは、その催事の手数料率を引いた金額で出します。条件の違いは予測の邪魔にはなりません。むしろ「区画が正面か奥か」のような条件こそ、水準の仮置きに使える情報として残します。
  • Q5 催事に出るのは年5回ほどです。それだけのために作る価値はありますか?
    回数ではなく金額で考えることをおすすめします。催事は1回の売上が自店の1ヶ月ぶんに迫る店も多く、持ち帰りと売り逃しの損も1回ごとに大きく出ます。まずは過去の催事の記録を復元して、持ち帰りの原価と売り切れの時刻を数字にするところまでで、作る価値があるかは判断できます。そこで損が小さいと分かれば、作らないという結論も含めてお伝えします。

次の催事の日程が決まっているなら、逆算はもう始められます。

前回の催事のレジ記録と宅配便の送り状があれば、
日の種類ごとの売れ方はある程度まで復元できます。
まずは過去の催事を数字で起こすところから、ご相談ください。