AIの基礎・活用
AIを仕事に使いたい。何から始める?
仕事をまるごとAIに任せる前に、作業を工程に分けて、一部分だけ試す方法があります。返信の下書きやメモの要約のように、外に出す前に人が読んで直せる工程から始めると、AIで足りる作業と人が続ける作業の境目が見えてきます。
この記事でわかること
- 「問い合わせ対応」のような仕事は、読む・分ける・調べる・下書きする・確かめる・送るといった工程の集まりです。AIを使えるかは工程ごとに違います。
- 総務省の令和8年版情報通信白書では、生成AIの業務での使い道として「議事録・メール作成補助」を挙げた日本の企業が約7割で最も多く、効果を実感した割合も最も高い結果でした。
- 最初の一工程は、毎週くり返している、人が読んで直せる、入力してよい情報だけで試せる、いまかかる時間が分かる、の4つを目安に選びます。
- 2週間ほど同じ工程で使い、かかった時間・直した箇所・使わなかった理由を書き残すと、続けるか、ほかの工程へ広げるかを決められます。
「仕事」ではなく「工程」で考える
「問い合わせ対応をAIに任せたい」と考えると、話が大きくなりすぎます。問い合わせ対応には、メールを読む、内容で分ける、料金や空き状況を調べる、返信を書く、間違いがないか確かめる、送る、記録する、といった工程が含まれています。
このうちAIに頼みやすいのは、返信の下書きのように文章を作る工程や、長い文面から要点を抜き出す工程です。料金を約束する、例外を認めるといった判断の工程は、人が続けたほうが安全です。仕事を工程に分けると、全部任せるか全く使わないかの二択から抜け出せます。
実際に、文章の一部分から使い始めている会社は多いようです。総務省の令和8年版情報通信白書が紹介する2025年度の企業向け調査では、日本で生成AIを使っている業務として「議事録・メール作成補助」を挙げた割合が約7割と最も高く、導入の効果を実感していると答えた割合も約7割で、ほかの業務より目立って高い結果でした。
問い合わせへの返信を、工程に分けてみる
例として、小さな工務店がホームページから受けるリフォームの問い合わせへの返信を、工程に分けてみます。ここに書く分け方と向き不向きは、当社が想定した例です。
読む・分ける
見積もり依頼、現地調査の希望、その他に分けます。件数が少なければ、生成AIに文面を渡して「どれに当たるか」を聞くこともできます。分けた結果は人が目を通します。
調べる
空いている日程や、施工できる地域かどうかを確かめます。社内の予定表や料金表を見る工程なので、チャットのAIに聞いても答えは出ません。自社の資料をAIに渡す方法は別に考えます。
下書きする
調べた日程と、お客さんの文面を渡して、返信の下書きを作ってもらいます。生成AIが得意な工程で、最初に試す候補になります。
確かめる・送る・記録する
日程・金額・約束の言葉に間違いがないかを人が読んで直し、送ります。送るかどうかの判断と、顧客の記録に残す作業は人の担当として残します。
最初の一工程を選ぶ4つの目安
工程を書き出したら、その中から1つだけ選びます。当社が相談を受けるときは、次の4つに当てはまる工程から始めることを勧めています。
毎週くり返している
月に一度しかない作業では、使い方に慣れる前に時期が終わります。週に何回も出てくる工程なら、2週間でも試した回数がたまります。
外に出る前に、人が読んで直せる
下書きや要約は、間違っていても送る前に直せます。生成AIは、もっともらしい誤りを含む答えを返すことがあるため、最初は直す機会がある工程を選びます。
入力してよい情報だけで試せる
お客さんの名前や電話番号を消しても成り立つ工程なら、使っているサービスの規約を確かめる前でも準備を始めやすくなります。会社で入力しない情報を決めていなければ、先にそこを決めます。
いまかかっている時間が分かる
「返信1通に15分くらい」のように、おおよその時間が分かる工程を選ぶと、試したあとに比べられます。時間が分からない工程は、試す前の1週間だけ測っておきます。
2週間だけ同じ工程で使い、記録を残す
選んだ工程で、2週間ほど続けて使ってみます。途中で別の工程にも手を広げると、何が良くて何が合わなかったのかが分からなくなるため、試す工程は1つに絞ります。
記録するのは3つです。1つ目は、AIを使った回ごとのおおよその時間。2つ目は、AIの答えのうち人が直した箇所で、「日付を間違えた」「敬語が硬すぎた」のように一言で書きます。3つ目は、AIを使わなかった回とその理由です。使わなかった理由には、その工程がAIに合わない事情が表れます。
2週間後に記録を見て、続けるか、頼み方を変えるか、別の工程に移るかを決めます。直した箇所が毎回同じなら、頼むときに条件を書き足すと直す手間が減ることがあります。頼み方の工夫は生成AIにうまく頼むには?で、誤りの起きやすい質問は生成AIの答えが間違っているのはなぜ?で説明しています。
どの工程から試すかは、社長が決めて伝える
社員が個人で使い始めるのを待つと、人によって使う工程も使い方もばらばらになります。どの工程から、誰が、いつまで試すかを決めて伝えると、2週間後に記録を集めて比べられます。
同じ白書の組織的な取組状況では、生成AIによる業務の見直しについて戦略や方針の状況を尋ねています。日本の中小企業で回答の割合が最も高かったのは「経営幹部から各部署に対して実施事項や達成目標が提示されている」でした。白書はこの結果から、中小企業のAI活用ではトップダウンの関与が鍵になっているとみています。
入力しない情報や、外に出す前に確かめる人を会社として決めるときは、社員が生成AIを使い始めたら、何を決めておく?が参考になります。
一工程で足りなくなったら
下書きに慣れてくると、「調べる工程もつなげたい」「料金表や施工例をAIに読ませたい」という希望が出てきます。社内の資料をもとに答えさせる仕組みは社内の資料をもとに答えるAIとは?で、予約システムやメールの操作まで任せる仕組みはAIエージェントとは?で解説しています。
数量の見込みや写真の判定のように、文章を作る以外の工程にAIを使う場合は、生成AIのチャットとは別の作り方になることがあります。違いは機械学習と生成AIは何が違う?にまとめています。自社の仕組みとして作る場合の費用の分け方はAI開発の費用はどう決まるかをご覧ください。
どの工程からAIを試すか、一緒に書き出します。
まだ何も決まっていない段階でも相談できます。データや資料の提出は要りません。いまの仕事の流れを伺いながら工程に分け、チャットのAIで試せる工程、自社の資料や記録が必要な工程、人が続ける工程を整理します。
