飲食・食品の業務
飲食店の定額制、小さな店でも始められる?
始められます。最初は対象を1品に絞り、1日の上限を決めて、店頭で月初に払ってもらう形にすると、決済の仕組みを用意せずに試せます。店のサイトやアプリで申込を受けるなら通信販売になり、自動で続くことや解約の方法を申込の画面に表示します。
この記事でわかること
- 飲食店の定額制は、決まった品を月いくらで、期間中に何回まで出す約束です。毎朝のコーヒー、平日ランチの汁物、週末のパンの受け取りなど、来るたびに出す品が決まっているものが向いています。
- 月額は、いちばん多く使う人の材料費で赤字にならないかと、単品で買う場合と比べて何回来れば得になるかの2つで確かめます。1日1杯のような上限を必ず決めます。
- 店頭で申し込んで払ってもらう形なら、申込の画面の表示は関わりません。店のサイト・アプリ・SNSから申し込める形にすると、特定商取引法の通信販売になります。
- その場合、申込の最終確認画面には期間内に使える回数、毎月の代金、自動で続くこと、解約の期限と方法を表示します。「いつでも解約可能」と強調しながら期限を付けると、誤認させる表示に当たるおそれがあります。
どんな品なら定額にできるか
定額制(サブスク)は、決まった料金を毎月払ってもらい、その期間に決まった品やサービスを何回まで受けられるようにする仕組みです。お客さんは来るたびの支払いや迷いが減り、店は来店の予定と月の売上の一部を先に見込めます。
向いているのは、来るたびに出す品が決まっていて、1回あたりの材料費を見積もりやすいものです。次は小さな店で考えられる形の例です。実際の店の事例や効果ではなく、当社が考えた想定です。
喫茶店の「毎朝の1杯」
ブレンドを1日1杯まで、1か月いくら。出勤前に寄る人が、毎回の会計をしなくて済みます。
定食屋の「汁物とごはんのおかわり」
ランチを注文した日に、汁物かごはんのおかわりを付けられる会員。定食そのものを定額にするより材料費の幅が小さくなります。
パン屋の「週末のパン」
毎週土曜に、決まった食パン1斤を取り置いて受け取ってもらう。焼く数を前もって決めやすくなります。
居酒屋の「1杯目」
来店した日の最初のドリンク1杯を月額に含める。対象にする飲み物の種類を先に決めておきます。
始める前に決める5つのこと
定額制は、紙の会員カードと名簿があれば始められます。売り出す前に次の5つを決めて、カードの裏や店内の案内に書いておくと、店員が替わっても答えがそろいます。
対象の品と上限
「ブレンドのみ・1日1杯まで」のように、品と回数をはっきりさせます。ほかの品に差額で替えられるかも決めます。
期間と続け方
1か月ごとに払ってもらうか、3か月分をまとめて受けるか。翌月も自動で続くのか、毎月払いに来た人だけ続くのか。
使える人
本人だけか、家族も使えるか。本人だけなら、会員カードを見せてもらう、名前を名簿で確かめるなど、店頭での確認方法を決めます。
休業日と値上げ
臨時休業や年末年始の休みがあった月の扱い、値上げするときに何か月前に知らせるか。
やめるとき
何日までに言えば翌月から止まるか、途中でやめた月の代金を返すかどうか。
月額は、毎日来る人と単品の値段で確かめる
月額を決めるときは、2つの見方で確かめます。1つは、上限いっぱいまで使う人がいても材料費で赤字にならないか。もう1つは、単品で買う場合と比べて、月に何回来れば得になるかです。
次は計算の例で、価格や材料費はすべて仮の数字です。ブレンドの店頭価格を450円、1杯の材料費を70円とし、月額を5,000円にした場合、毎日1杯ずつ31日来ても材料費は2,170円です。一方、単品で11杯買うと4,950円なので、月に12回以上来る人にとって単品より得になります。
材料費のほかに、カップやおしぼりなどの消耗品、席を使う時間、混む時間帯にお客さんが集中しないかも考えます。週に2回しか来ない人には得にならないので、そうした人には回数券(コーヒーチケット)のほうが合うこともあります。
代金を先に受け取る点は回数券と同じです。使える期間を1か月ごとに区切り、翌月に持ち越さない形なら、受け取った日から6か月を超えて使えることはありません。資金決済法の前払式支払手段の規定は、発行の日から6か月以内に限って使えるものには適用されません(第4条第2号、施行令第4条第2項)。数か月分をまとめて売る場合は、使える期限が6か月を超えないかを確かめてください。
ネットで申込を受けるなら、自動で続くことと解約の方法を画面に出す
店頭で申し込んで、その場で払ってもらう形なら、通信販売の決まりは関わりません。店のサイトやアプリ、SNSのフォームから申し込める形にすると、特定商取引法の「通信販売」になります。郵便のほか、パソコンやスマホなどの機器を使って申込を受ける方法が含まれるためです(第2条第2項、施行規則第2条)。
通信販売の広告には、対価、支払いの時期と方法、提供する時期、解約に関する事項などを表示します(第11条)。店の名前・住所・電話番号のほか、2回以上続けて契約する必要があるならその旨と金額・契約期間も表示事項です(施行規則第23条)。申込ボタンを押す最終確認画面には、分量と、第11条の第1号から第5号の事項を表示しなければなりません(第12条の6)。表示する事項の全体は通販の記事で説明しています。
消費者庁の「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」は、サブスクリプションにもこの表示が必要だとしています。定額制で特に気をつけたいのは、次の4点です。
期間と使える回数
提供する期間や、期間内に使える回数が決まっていればその内容を表示します。「1か月・1日1杯まで」のように書きます。
自動で続くこと
解約するまで続く契約や自動更新のある契約は、その旨を明確に表示します。1年分の支払額のように期間を区切った目安を示すことが望ましいとされています。
無料・割引の期間のあと
初月無料などのあとに通常の料金へ自動で移るなら、いつから、いくらになるかを前もって分かるように表示します。
解約の期限と方法
「毎月20日までに申し出れば翌月から停止」のような申し出の期限や、解約時の違約金があればその内容も表示事項です。解約を電話だけで受けるなど方法を限る場合は、リンク先に任せず最終確認画面にも明確に表示します。
「いつでも解約できます」と書く前に
同じガイドラインは、「いつでも解約可能」と強調する表示について、実際には解約に条件があるのにそう表示すると、人を誤認させる表示に当たるおそれがあるとしています。翌月分を止めるのに期限があるなら、強調の言葉を使わずに期限そのものを書くほうが、店とお客さんの間で食い違いが起きません。
第12条の6に反して事実と違う表示をしたり、表示すべき事項を出さなかったりして、お客さんが誤認して申し込んだ場合、お客さんはその申込を取り消せます(第15条の4)。解約の方法に制約がある旨を表示しても、その制約がそのまま有効になるわけではなく、消費者の権利を不当に制限する条項は消費者契約法などで無効になることがある、ともガイドラインは書いています。
外部の決済サービスを使って毎月の支払いを受ける場合は、そのサービスの画面で何が表示されるか、解約を誰がどこで受け付けるかも、利用規約と管理画面で確かめておきます。
まず10人から、紙の名簿で試す
最初から決済の仕組みを作る必要はありません。ここからは当社の提案ですが、よく来る常連さんに声をかけて10人ほどで1〜2か月試し、何回来たか、上限まで使った人がいたかを名簿に書いておくと、月額と上限が合っているかを確かめられます。名前や連絡先を預かるときの決まりは常連さん向けの仕組みの記事で触れています。
会員が増えて、店員ごとに確認のしかたが違う、今月払った人がすぐに分からない、といった状態になったら、会員の一覧と今日使ったかどうかを画面で確かめる形に移すことも考えられます。ネットで申込を受けるなら、最終確認画面に表示する事項と、解約の受付をどこで記録するかを一緒に決めます。
業種は違いますが、当社では、毎週届ける野菜セット定期便の申込とお休みの管理や、スタジオの回数券と受付の開発プランを公開しています。申込の画面に出す事項や、受付で残りの回数を確かめる考え方は、飲食店の定額制にも使えます。
定額制の会員と利用回数を、店頭で確かめられる形にできます。
紙の名簿で試してみたい、ネットで申込を受けたいが画面に何を出すか迷っている。そんな段階でも相談できます。どの品を対象にするか、会員の確認と記録をどうするかを聞きながら、紙で続ける部分と画面にする部分を一緒に整理します。
