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仕入れの数量は、売上目標で決めるか、実績から見込むか

発注量と仕込み量は、過去の実績から見込んだ数量で決めます。売上目標は必要な利益から逆算して出す金額なので、伸び率をそのまま数量に掛けると在庫が増えます。目標を持ちながら毎日の仕入れを決めている店の経営者向けの記事です。

この記事でわかること

  • 売上目標は、固定費と目標利益から逆算して出る金額です。中小機構の起業マニュアルは、目標利益に必要な売上高を「(固定費+目標利益)÷(1-変動費率)」と示しています。この式に、あすの販売数を左右する材料は入っていません。
  • 発注量と仕込み量の見込みは、条件をそろえた過去の日の販売数から出します。目標の伸び率を掛けて出した数量とは別の数字です。
  • 目標と見込みを比べるときは、期間と単位をそろえます。目標は金額、見込みは数量で出るので、客単価か商品単価でどちらかに換算します。
  • 差が出たら、先に埋める打ち手を決めます。打ち手で増える数量を説明できるようになってから、その分だけ発注に足します。
  • 本文の試算例では、月の見込み売上120万円に対して必要売上高が125万円です。差の5万円を仕込み量で埋めると、材料費でひと月およそ2万円が売れ残りに変わります。

数量は実績から見込み、売上目標は打ち手で追う

来月の仕入れを考えるとき、手元には性質の違う2つの数字があります。1つは、店として達成したい売上目標。もう1つは、これまでの記録から見込んだ販売数です。発注量と仕込み量に使うのは、後者です。

売上目標は、家賃や人件費といった固定費と、残したい利益から逆算して出す金額です。何がいくつ売れるかを調べて出す数字とは、出どころが違います。目標が前年比1割増なら仕入れも1割増、という決め方をすると、増えるのは売上ではなく売れ残りです。

目標そのものは引き続き必要です。目標と見込みの差は、販促、予約の取り方、品目の入れ替えといった打ち手で埋めます。打ち手が決まって、それで何食ぶん増えるかを言えるようになってから、発注に足します。順番が逆になると、仕入れだけが先に増えます。

売上目標

固定費と目標利益から逆算して出る、月や年の金額です。達成のための行動を決める側の数字です。

見込み(予測)

条件をそろえた過去の日の販売数から出る、品目ごと・日ごとの数量です。発注量はここから決めます。

2つの差

打ち手を決めるための材料です。打ち手が決まるまでは、差をそのまま仕入れに足しません。

売上目標は、何から逆算して出てくる数字か

目標の作られ方を先に確認します。中小機構が運営するJ-Net21の起業マニュアル損益分岐点を使った目標売上高は、費用を変動費(売上に比例してかかる費用。原材料や仕入商品など)と固定費(売上に関わらず一定的にかかる費用。正社員の給与や店舗の家賃など)に分け、損益分岐点売上高を「固定費÷(1-変動費比率)」、目標利益に必要な売上高を「必要売上高=(固定費+目標利益)÷(1-変動費率)」と示しています。

この式を、1日の平均客数40人、客単価1,200円、月の営業日数25日の店に当てはめてみます(以下は試算例で、実在の店舗の数字ではありません)。固定費が月60万円、変動費率が40%なら、損益分岐点売上高は60万円÷0.6で100万円。ここに目標利益15万円を足すと、必要売上高は75万円÷0.6で125万円になります。

式に入っているのは、固定費と目標利益と変動費率の3つだけです。来月の曜日の並びも、去年の同じ月に何食出たかも、この計算には入りません。目標売上高は、店の外で何が起きるかとは無関係に決まる金額です。だから、達成できるかどうかは別に確かめる必要があります。

変動費率に何%を使うかは、自店の決算の数字から取ります。業種の水準を参考にしたいときは、日本政策金融公庫の小企業の経営指標調査があります。決算データをもとに小企業の収益性や生産性などの指標値を集計したもので、業種ごとに隔年で実施されています。飲食店の食材費と人件費の水準はFL比率の記事にまとめました。

発注量の見込みは、どの記録から出すか

見込みのほうは、過去の日付と数量の記録から出します。同じ曜日、同じ営業形態の日だけを集めて平均と最小・最大を出すのが、いちばん手数の少ない方法です。品目ごと、日ごとに数量が出るので、そのまま発注の数に使えます。

同じJ-Net21の起業マニュアル販売・仕入計画の書き方は、販売計画を「いくらのものを何個売るかを予定したもの」、仕入計画を「売上をつくるためにいくらのものを何個仕入れるかといったことを計画したもの」と説明しています。飲食業の売上の積算方法として「客単価×席数×回転率×営業日数」を挙げ、客数や客単価は予測になるとしたうえで、希望的観測ではなく、店舗がある通りの通行量や商品の特性を考慮する必要があると書いています。計画に載せる数量にも根拠が要る、という整理です。

見込みは1つの数字では出ません。同じ金曜でも9個の日と16個の日があるなら、9個から16個の幅が見込みです。幅のどちら側に寄せるかは、その品目が日持ちするか、当日に追加で仕入れられるかで決まります。幅の読み方は発注は多めにするか少なめにするかの記事に、平均の出し方はExcelでの計算の記事にまとめています。

記録がどれくらいたまっていれば見込みを出せるかは、決めたいことによって変わります。曜日ごとの差を見るなら4週間、季節の動きまで見るなら1年ぶんです。必要なデータ期間の記事で区切りごとに整理しました。

目標と見込みを1つの表に並べる。期間と単位をそろえる

2つの数字を比べるには、期間と単位をそろえます。期間は同じ月、同じ営業日数で切りそろえます。単位は、目標が金額、見込みが数量で出るので、客単価か商品単価を使ってどちらかに換算します。

先ほどの店で並べてみます。見込みの側は、1日40人×客単価1,200円×25日で、月の見込み売上が120万円。目標の側は必要売上高125万円です。差は5万円になります。この5万円を客単価1,200円で割ると約42人、25日で割ると1日あたり約1.7人です。

ここまで落とすと、差の大きさが判断できます。1日1.7人なら、予約をひと組多く取る、常連への案内を1回増やすといった打ち手の範囲です。これが1日10人なら、打ち手で埋まる幅を超えているので、目標利益か固定費のほうを見直す話になります。差を金額のまま眺めていると、この区別が付きません。

表の列は3つで足ります。目標(金額と、客単価で割った客数)、見込み(数量と、客単価を掛けた金額)、実績。月末に3列を並べ、差の理由を1行残します。J-Net21の経営ハンドブック経営計画の策定も、計画書を毎年・毎月・毎週・毎日という単位でブレークダウンして共有してチェックすることで経営計画と実績のズレが分かり、なぜズレが発生したのかを調べることで問題を早く見つけられる、としています。

期間をそろえる

同じ月、同じ営業日数で切ります。月の途中で見るときは、経過日数どうしで比べます。

単位をそろえる

客単価か商品単価で、金額と数量を行き来させます。換算に使った単価は表に残します。

差を1日あたりに割る

月の差額を営業日数で割ると、打ち手で埋まる幅かどうかが判断できます。

DEMO

目標売上と、実績からの見込みを並べてみる

固定費・目標利益・変動費率から必要売上高を出し、直近の平均客数と客単価から出した見込み売上と並べます。差を1日あたりの客数に割り、その差を仕込み量で埋めた場合に残る数量と材料費まで表示します。

必要売上高と見込み売上の差|1日あたりの客数と、埋めた場合の材料費まで

本文の試算例(平均客数40人、客単価1,200円、営業日数25日、固定費60万円、変動費率40%、目標利益15万円)を初期値にしています。数字を入れ替えると、差が打ち手で埋まる幅かどうかを確認できます。

触って動かせます
計算の中身
損益分岐点売上高は固定費÷(1-変動費率)、必要売上高は(固定費+目標利益)÷(1-変動費率)です。見込み売上は平均客数×客単価×営業日数。売れ残りは、必要売上高÷見込み売上の倍率で仕込み量を増やし、実際の客数が見込みどおりだった場合に残る数として計算しています。
使っている前提
客単価と変動費率は月を通して一定とし、1人あたりの材料費を客単価×変動費率としています。値引き、まとめ買い、品目ごとの原価の違いは扱っていません。日持ちする品目は在庫として残るため、金額は廃棄額とは限りません。
確かめてほしいところ
初期値では必要売上高125万円に対して見込み売上120万円、差は5万円、1日あたり約1.7人です。目標利益を15万円から30万円に上げると、1日あたりの不足客数は10人になり、本文で触れた「目標利益か固定費のほうを見直す」側に変わります。

※ この画面は金額と数量の関係だけを計算しています。品目ごとの日持ち、当日の追加仕入れ、予約の有無は扱っていません。実際の決算の数字と直近の記録に置きかえて確認してください。

差を仕入れで埋めると、ひと月でいくら残るか

差の5万円を仕込み量で埋めた場合を計算します。125万円÷120万円で約1.04倍なので、1日40食の仕込みを42食にします。実際に来る客数が見込みどおり40人なら、1日およそ1.7食が残ります。25日で約42食、材料費は客単価1,200円×変動費率40%で1食480円ですから、ひと月でおよそ2万円です。

この2万円がどこへ行くかは、品目によって分かれます。日持ちしないものは廃棄になり、その月の費用として出ていきます。日持ちするものは在庫として棚に残り、帳簿の上では費用になりません。ただし仕入代金の支払いは先に発生します。売れていない商品の代金だけが手元から出ていく形です。

J-Net21の経営ハンドブック資金繰り表を活用するは、過去の実績から作る資金繰り実績表と、これからの資金の動きをみる資金繰り予定表の2つを挙げ、両者の差異を比較・分析して問題点を洗い出すことで、今後を見越した資金の流れを調整できるとしています。仕入れを目標に合わせて増やすと、まずこの予定と実績の差に出ます。

仕入れを足してよいのは、増える数量を説明できるときです。10人の予約が入った、近くの工事が始まって昼の客数が増えている。こうした材料があるなら、その分を数量で足します。「目標だから」は、数量を足す理由になりません。

表計算で始める範囲と、仕組みにするときに決めること

始めるのに費用は要りません。月ごとのシートに、目標・見込み・実績の3列を作ります。目標の列は年に1回か2回、固定費と目標利益が変わったときだけ入れ替えます。見込みの列は、売上の大きい10〜20品目について、同じ曜日の直近4週から8週の平均を週に1回入れ直します。この形なら毎週30分ほどで回せます。

続かなくなる合図は、数字の量に出ます。品目が増えて転記が月末にまとめて発生している。単価の更新が追いつかず、去年の単価のまま計算している。この段階になると、見込みの列が空欄のまま目標の列だけが残り、結局は目標で発注する形に戻ります。

当社が開発中の手軽に使える需要予測AIは、日付と数量の2列があるCSVから28日先までの予測を幅つきで出します。リリース時期は未定です。手元のCSVを1つお預かりして、予測に使える記録かを確認する相談は無料で受け付けています。試験予測に費用がかかる場合は、始める前に金額をお伝えします。

目標と見込みを並べる画面まで作る場合、見積もりのために確認するのは3つです。対象の品目数、レジや会計ソフトから日付と数量を書き出せるかどうか、そして固定費と変動費率をどこから取るかです。売上と仕入れと人件費を同じ月にそろえて損益を出す形は、札幌市内の飲食店へ納品した損益管理アプリに書いています。試す段階から業務画面までを費用の性質で分ける考え方と、期間の目安はAI開発の費用の記事にまとめました。

表計算で足りる範囲

10〜20品目について、目標・見込み・実績の3列を週1回更新する形です。費用はかかりません。

仕組み化を考える目安

転記が月末にまとまってきた、見込みの列が空欄のまま、といった状態です。

無料のデータ確認

CSVを1つお預かりし、見込みを出せる記録かを確認してお返事します。この確認は無料です。

まとめ

売上目標は固定費と目標利益から逆算して出る金額、見込みは過去の記録から出る数量です。発注量に使うのは見込みのほうで、目標の伸び率を数量に掛けると売れ残りが増えます。

2つを比べるときは、期間と単位をそろえ、差を1日あたりに割ります。1日あたり何人・何個かまで落とすと、打ち手で埋まる差か、目標のほうを見直す差かが分かれます。

まず、今月の目標売上を客単価で割って、1日あたり何人必要かを出してみてください。直近の実績の客数と並べた差が、これから埋めにいく幅です。

よくある質問

目標に合わせた仕入れを何年も続けてきました。どこから直せばいいですか?

売上の大きい品目を3つだけ選び、直近8週の同じ曜日の販売数を並べるところから始めてください。その平均と、いま頼んでいる数の差が、目標に寄せて増やしている分にあたります。全品目を一度に切り替える必要はありません。3品目で1ヶ月続けて、棚に残る量が変わるかを見てから広げてください。

目標に届きそうにない月は、仕入れを減らしてよいですか?

目標に届かないことと、何個売れるかは別の話です。仕入れを減らす根拠になるのは、直近の記録で販売数そのものが落ちていることのほうです。記録が落ちていないのに仕入れだけ減らすと、品切れで売上をさらに落とします。減らすなら、日持ちしない品目から、幅の下側に寄せる形で調整してください。

開店したばかりで、過去の記録がありません。何を見込みに使えばいいですか?

最初は記録の代わりになる材料を置きます。席数と回転率、近隣の通行量、同じ立地の店の営業時間帯などです。J-Net21の起業マニュアルも、客数や客単価の予測に通行量や商品の特性を考慮するよう書いています。数週間たったら、置いた数字を実績で上書きしてください。最初の発注量の置き方は新商品・新店の最初の発注量の記事にまとめています。

目標と見込みのどちらを、スタッフに共有すればいいですか?

両方を同じ表で見せてください。目標だけを共有すると、達成できない月に数字の話をしにくくなります。見込みだけを共有すると、打ち手を考える理由がなくなります。差が1日あたり何人・何個かまで割って見せると、その日に何をすればいいかが決まります。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

目標と実績の数字が毎月合わない、という段階から相談できます

目標に合わせて仕入れた分が在庫に残っている。目標と実績を並べた表は作ったが、どちらを見て発注すればいいか決まらない。品目ごとの見込みまで手が回らない。そんな状態でご相談いただけます。レジや会計の記録を1つ見て、目標として追う数字と、発注に使う見込みを分けるところから始めます。数字をそろえてからでなくて構いません。

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