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需要予測・AI

発注を自動にしたら、担当者の仕事は何が残るか。任せられる計算と、人が続ける確認

自動にできるのは、発注量を計算する部分です。在庫の確認、仕入先ごとの連絡、届いた品の照合は人の作業として残り、毎日の記録をそろえる手間はむしろ増えます。発注をシステムに任せるか迷っている経営者向けの記事です。

この記事でわかること

  • 発注の仕事は、数量を決めるだけで終わりません。在庫を確認し、仕入先ごとに注文を出し、届いた品を照合して記録するまでが一続きです。予測が引き受けるのは、このうち数量を決めるための材料です。
  • 人に残るのは4つです。在庫と入荷予定の反映、記録に無い予定の入力、仕入単位への丸め、そして最終決定です。計算した数量をそのまま発注する運用には、当社は最初からしません。
  • 新しく増えるのは、記録をそろえる作業です。売れた数を毎日残し、休業日や返品を直し、予測から外れた日の理由を書きます。月末にまとめて付ける記録では、翌日の発注に使えません。
  • 費用は、品目数、記録の形、仕入先の数と連絡手段、承認の要否で変わります。導入後に確かめる指標は、廃棄額、品切れで断った数、発注にかかる時間の3つです。

自動になるのは数量の計算で、発注の手続きは人の側に残る

発注をシステムに任せたいというご相談で、当社が最初に確認するのは「発注のどこを指しているか」です。多くの場合、頭にあるのは「いくつ頼むかを考えている時間」です。ここは過去の販売数から計算でき、予測を使える場所です。

ただ、発注の仕事はそこだけではありません。中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21の購買管理の解説では、発注は購入依頼を受けて注文書を出し、注文請書を受け取り、届いた品を受入検査して検収し、支払いにつなげるまでの一続きの手続きとして説明されています。数量を決めるのは、この流れの一部です。

この記事では、計算に任せられる範囲、人に残る4つの判断、導入すると新しく増える作業、費用の決まり方の順に説明します。最後まで読んだときに、自店の発注のどこを仕組みにするかを決められる状態を目指します。

計算に任せられる部分

過去の日付と数量の並びから、品目ごとに先の数量の目安を出すところ。曜日や季節の波の反映も含みます。

人に残る部分

在庫と入荷予定の反映、記録に無い予定の入力、仕入単位への丸め、最終決定の4つです。

新しく増える部分

毎日の記録をそろえる作業、予測から外れた日の理由を残す作業、月に1回の設定の見直しです。

そもそも発注の仕事には、どこからどこまでが入るのか

先ほどのJ-Net21の解説(食品づくりにおける購買管理の基本、中小企業診断士の高橋順一氏による2013年の記事)は、発注を決めるときに明確にする事項として、品番、数量、単価に加えて、納期、納入地、品質の要件、特別な指示、返品条件、支払条件、納期が遅れたときの対応を挙げています。数量は、注文書に載る項目の1つという位置づけです。

品物が届いたあとの作業も同じ解説に出てきます。受け入れ時に外観を確認して重量を量り、温度管理が必要な品は配送車が荷受け場に着いた段階で車内の温度を測る。受け取れない品はロット番号などで区分けする。数量と品番を確認して受領印を押し、受入検査に合格したものを検収して支払いにつなげる。ここまでが発注の仕事です。

小売の側から見ても同じです。J-Net21の起業マニュアルは、いつ、どのくらいの量を、どこへ発注するかを業務として標準化し、ルールにしたものを補充発注システムと呼んでいます。発注を仕組みにするというのは、数量の計算だけでなく、この3つを決めることだと考えてください。

納品時に何を確かめ、どう記録に残すかは検収記録簿の記事で詳しく説明しています。ここが紙のままでも予測は始められますが、発注全体を1つの画面にまとめたいなら、検収の記録もあわせて設計します。

計算に任せられるのは、どの数字か

任せられるのは「過去の日付と数量の並びから、この先に売れそうな数量を見込む」部分です。曜日による増減、季節による増減、特売や催しのあった日の扱いをまとめて計算し、品目ごとに一覧で出します。1品目ずつ電卓で平均を出していくと時間がかかりますが、計算そのものは機械の得意な作業です。

当社が開発中の手軽に使える需要予測AIは、日付と数量の2列のCSVから28日先までの予測を範囲つきで出します。同じ考え方を手元で試すだけなら、Excelの移動平均でもかなりのところまでできます。計算式と限界はExcelでどこまで計算できるかの記事にまとめました。

ここで注意してほしいのは、出てくる数字が「売れそうな数量」であって、「頼む数量」とは別だということです。いま棚にある在庫を引き、届く予定の分を引き、仕入単位に合わせて丸めて、はじめて発注数になります。この引き算の手順は発注量を決める3つの数字の記事発注点と安全在庫の記事で説明しています。

予測を入れても、人に残る4つの判断

数量の目安が出たあと、それを発注数に変える作業は人の側に残ります。発注を仕組みにするときに必ず出てくるのは、次の4つです。

このうち1つ目の在庫の確認は、仕組みにするかどうかで負担が大きく変わります。J-Net21のビジネスQ&Aは、保管場所を誰にでも分かるように決めたうえで、入出荷のたびに製品名と日付と数量を台帳に記録し、担当者を決めて記録を続ける仕組みを作ることを勧めています。この記録が続いていれば画面に在庫が出ますが、続いていなければ毎回、棚や冷蔵庫を開けて数えることになります。

4つ目の最終決定を人が持つのは、当社の方針です。計算した数量をそのまま仕入先へ送る設定は、最初からは作りません。画面に数量を出す、人が見て直す、直した記録を残す。この順で2、3ヶ月動かしてから、どの品目なら人の確認を省けるかを一緒に決める進め方を提案しています。

在庫と入荷予定を反映する

棚と冷蔵庫の現物、まだ届いていない注文の分。ここが画面に出ていないと、計算した数量は使えません。

記録に無い予定を入れる

団体の予約、近所の催し、臨時休業。過去の販売数には入っていない予定です。扱い方は特売・催しの日の記事にまとめています。

仕入単位に合わせる

1ケース12本、最低発注金額、配送のある曜日。計算上は7本でも、頼めるのは1ケース単位ということがあります。

最終決定と承認

金額の大きい品や、いつもと大きく違う数量は人が止めます。数字が跳ねた理由を確かめてから送ります。

導入すると、新しく増える作業もある

ここを伝えずに始めると、あとで「思ったより楽にならない」となります。予測を使う発注では、次の3つが新しく発生します。

1つ目は、記録を毎日そろえることです。予測は前日までの数量を使って計算するので、月末にまとめて売上を入力する運用のままでは、翌日の発注に間に合いません。休業日の行、返品のマイナス、セット商品の数え方も、そろえておく必要があります。直し方は売上データの直し方の記事に書きました。

2つ目は、予測から外れた日に理由を残すことです。大雨だった、近所で工事が始まった、テレビで紹介された。この1行があるかどうかで、翌月の見直しの精度が変わります。書き方は予測の範囲の記事で説明しています。3つ目は、月に1回の設定の見直しです。品目の入れ替え、仕入単位の変更、担当者の交代を反映します。

導入して1、2ヶ月は、紙の発注と画面の発注を並べて動かすため、作業はむしろ増えます。そのうえで、廃棄額、品切れで断った数、発注にかかっている時間の3つを毎月記録してください。当社は削減できる金額をあらかじめ約束しません。並行運用の期間に自店の数字を取って、続けるかどうかを判断する材料にしてください。

1週間の発注作業は、どこに時間がかかっているか

「数量を決める時間」が発注全体のどのくらいを占めるかは、店によってまったく違います。品目が20で仕入先が2社の店と、品目が80で仕入先が8社の店では、時間のかかる場所が変わります。下の画面で自店に近い条件を選んで、内訳を確かめてください。

目安として、品目数が多いほど数量を決める時間と在庫を数える時間が伸び、仕入先が多いほど注文書を作る時間と届いた品を照合する時間が伸びます。前者が大きい店は予測を入れる効果が出やすく、後者が大きい店は発注の連絡そのものを先に整理したほうが早く楽になります。仕入先ごとにFAXやLINEや電話が混ざっている場合の整理のしかたは、飲食店の発注管理アプリの開発プランで紹介しています。

DEMO

品目数と仕入先の数を変えると、時間のかかる場所がどう動くか

品目数、週の発注回数、仕入先の数、在庫の数え方、記録の付け方を選ぶと、1週間の発注作業の内訳が出ます。数量を決める時間が全体のどのくらいかと、予測の数字が関わる工程はどこかを確かめられます。

発注作業の時間の内訳|在庫の確認・数量の決定・注文・検収・記録を分けて数える

5つの条件を変えて、1週間の発注作業が工程ごとに何分かかるかを試算できます。予測を入れたときに材料が変わる工程と、変わらない工程を色分けして表示します。

触って動かせます
計算の中身
各工程の時間は「1件あたりの分数 × 件数 × 週の回数」で出しています。在庫の確認と数量の決定は品目数ぶん、注文と検収は仕入先の数ぶん、記録は日数ぶんで数えます。1件あたりの分数は画面の表に出しているので、自店の時間に置き換えて確かめてください。
使っている前提
1件あたりの分数は、説明のための想定値です。実際の導入実績から取った数字は使っていません。予測を入れても、この時間がそのまま無くなるわけではなく、数量を決める工程で見る材料が変わります。
確かめてほしいところ
品目数を10から80へ動かすと、数量の決定と在庫の確認が伸びます。仕入先を2社から8社へ動かすと、注文と検収が伸びます。自店がどちらの形かで、先に手を付ける場所が変わります。

※ 数値は入力例です。この画面は、発注作業のどこに時間がかかっているかを分けて見るためのものです。実際の作業時間は、店の広さ、仕入先の連絡方法、担当者の人数で変わります。

1品目から紙で試し、費用を見積もるために何を確認するか

始め方は、発注量に迷う品目を1つ選び、紙1枚を1ヶ月続けることです。日付、売れた数、その日に頼んだ数、翌日の在庫を並べます。ここに予測の数字を書き足すだけで、計算に任せられる部分がどれだけあるかが見えます。システムを入れる前に、記録が続く体制かどうかも分かります。

当社の手軽に使える需要予測AIは開発中で、リリース時期は未定です。リリース前でも、手元のCSVが予測に使える記録かどうかの確認と、当社側での試験予測は無料で受け付けています。3ヶ月分ほどの日付と数量があれば試せます。CSVが手元になくても、いまの発注の手順を聞くところから始められます。

発注の画面まで作る場合の費用は、下の4つで変わります。見積もりの前にこの4つを決めておくと、金額の幅が小さくなります。品目ごとの発注点と数量を1つの表で扱う例は、飲食店の発注表アプリの開発プランにまとめています。

品目数と、扱う単位

何品目を対象にするか。ケースと本のように単位が2段ある品目がいくつあるか。

記録の形

レジや販売管理からCSVを書き出せるか、手書きの伝票しかないか。書き出せない場合は入力の画面から作ります。

仕入先の数と連絡手段

何社に、FAX、LINE、電話、Webのどれで送っているか。自動で送るところまでやるかどうか。

承認の要否と連携

店長の承認を挟むか。会計ソフトや在庫システムとつなぐか。つなぐ相手が増えるほど費用は上がります。

まとめ

発注をシステムに任せても、無くなるのは数量を計算する時間の一部です。在庫と入荷予定の反映、記録に無い予定の入力、仕入単位への丸め、最終決定は人に残ります。届いた品の照合と検収も同じです。

代わりに、毎日の記録をそろえる作業と、外れた日の理由を残す作業が増えます。この2つが続く体制を作れるかが、予測が定着するかどうかの分かれ目です。月末にまとめて記録する運用のままでは、翌日の発注には使えません。

まず、発注量に迷う品目を1つ選び、日付、売れた数、頼んだ数、翌日の在庫の4列を1ヶ月続けてみてください。続いた記録があれば、そのまま試験予測にかけられます。

よくある質問

発注を自動にすれば、担当者を置かなくてもよくなりますか?

担当者は必要です。自動になるのは数量を計算する部分で、在庫の確認、仕入先への連絡、届いた品の照合と検収は残ります。担当者が休んだときに別の人が代われるようにしたい、という目的であれば、発注の手順と数量の決め方を画面に出しておくことが近道です。人を減らす前に、手順が1人の頭の中にしかない状態を解消できます。

計算した数量をそのまま自動で発注する設定にはできますか?

技術としてはできますが、当社は最初からその設定にはしません。まず画面に数量を出して人が直す運用を3ヶ月ほど続け、直した回数と理由を見てから、人の確認を省ける品目を決めます。日持ちする品で、仕入単位が小さく、金額の小さいものから候補になります。

記録が手書きの伝票しかありません。それでも始められますか?

始められます。まず品目を1つ決めて、日付と売れた数の2列を1ヶ月ぶん書き出してください。3ヶ月分ほどたまれば試験予測にかけられます。全品目をいきなり入力する必要はありません。伝票の入力そのものを楽にしたい場合は、入力の画面を先に作る順番もあります。

導入した効果は、どうやって確かめますか?

廃棄した食材の仕入額、品切れで断った数、発注にかかっている時間の3つを、導入の前後で同じ方法で記録して比べます。当社は削減できる金額を先に約束しません。並行運用の1、2ヶ月で自店の数字を取り、続けるかどうかの判断に使ってください。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

発注のどこを自動にできるか、作業を分けて確認します。

発注に時間がかかっている、担当者が休むと止まる、数量の決め方が人によって違う。そんな段階からご相談いただけます。いまの発注の手順を一つずつうかがい、計算に任せられる部分と、人が続ける部分を分けます。CSVや資料が手元になくても構いません。

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